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「そういうのって、着エロって言うのかしら?」
「みたいですね……」
「胸元が全部見えてるし、ノーブラなの丸わかりだし」
「えへっ……、ダイタン過ぎるかな?」
「今の若いコって、そういうの平気だよね」
「エロ可愛って言いかた、しますよ。」
「わたしも若かったら、そんなの着てみたいけど」  
 chikaは『ケルベロスの首輪』を訪れて夕貴ママとおしゃべりしていた。
 週に一度か二度、こうして『ケルベロスの首輪』に来るのを楽しみにしている。
 今日のchikaはおなかのところにリボンを巻いた胸刳りの深いサテンキャミを着ていた。
 黒地からうっすらと白い乳房が浮き上がっているところがかなりセクシーだ。

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 近頃のchikaは、ショッピング大好き人間になってしまっている。
 何といっても、高級なお店の下着コーナーに行って堂々とパンティやブラに触れることができるのがうれしい。 
 おそろしいほどの値札がついていて後込みしてしまうが、館岡からもらったカードを使えば買えないことはない。
 でもまだそれらをエレガントに着こなす自信はない。
 上品さ……が自分に備わっているとは思えないからだ。
 chikaは女のフェイクである事には違いはないから……。
「ミニに網タイツにブーツか……、いいわねえ」
 夕貴ママにほめられたchikaはカウンターの止まり木から降りて、くるりとターンしてみせる。
 ひらひらミニが浮き上がり、ストッキングを吊ったサスペンダーとともに白い太腿の付け根があらわになる。
「チカオちゃんって、ほんとセクシーになったわねえ」
「チカオちゃん、それ、何?」
 有頂天になって烈しく回転したものだから、キャミの裾がまくれてしまったのだ。
「あ? これ、コルセット」
「コルセット?」

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 chikaはカウンターのほうに歩み寄り、キャミをまくり上げて腹部を夕貴ママに見せた。
「館岡さんにもらったの。ウエストを細くしなさい、って」
「へえー、これ、本革ね」
「あたしのために別注で造ってもらったんだって。ストッキングを吊るサスペンダーが付いててSMチックでしょ」
「ふーん、組み紐で絞り上げるようになってるのねえ」
「この紐、うしろだと、自分で締められないから前側なんだって」
「このコルセット、いつも着けてるの?」
「うん」
「苦しくない?」
「苦しいけど、館岡さんに着けるように言われてるから」
 館岡に命じられて従うことがchikaにとっては何よりも大事だった。
 館岡はきつい調子で命じたわけではない。
 買ってきたコルセットをチカオに見せて、「これを着けてウエストを絞りなさい」と言っただけだ。

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 chikaは、さっそくその日からコルセットを着用し、苦しいぐらいに締め上げている。
 お風呂から上がってゆったりくつろいでいるときなど、コルセットを着ける気分ではなくなる。
 でもそんなことしたら、あのひとを裏切ることになる、苦しくてもやっぱ、着けとかなくっちゃね。
 と、chikaは何度も自問自答したものだ。
 奇妙なことにコルセットによる胴腹部への圧迫感が、chikaには館岡をより身近に感じさせた。
 コルセットを常用していると、館岡との一体感がある。
 性行為で挿入してもらったときの一体感は肉体的結合にすぎないが、コルセットを媒介にして館岡とよりいっそう緊密な精神的一体感を得られたような気がする。

「チカオちゃん、前からほっそりしてたじゃない? ダイエットしなくても、女として通るわよ」
「あたし、ダイエットなんかしてませんよ」
「やせるんでしょ?」
「コルセットするのはウエストを細くするためだけですよお。お食事の量を減らしてるわけじゃないんです。今までとおんなじ、あたしって、もともとそんなにたくさん食べるほうじゃなかったし……」
「そうよね、そんなに体型が変わってないわよねえ。おっぱいができて、すごく変わった印象があるけど」
「それと、無駄毛を処理してるでしょ。だから、見た感じがちがってきてるんだと思うけど」
「チカオちゃんって、色白だったけど、白いだけじゃなくて、つやつやすべすべのお肌になってきたわねえ」
「うふっ、エステで磨いてもらってるから」
 もちろん。館岡がいるから出来る事だった。

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「ホルは?」
「ぜんぜん使ってませんよ」
「ぐっと女っぽくなるのにねえ」
「館岡さんがダメって言うんです。おっぱいつくってもらった先生は、ホルモンでもっと女らしくなれるよ、って言ってくれるんですけどね。でも、ホルモン使うと、あそこの勃起力が減退するかもしれないでしょ。館岡さん的には、そういうのはダメだって」
「チンポが縮んでしまって射精しなくなったコもいるからねえ」
「そんなの困るなあ……」
「わたしなんか、もうチンポ切り取っちゃってるから、射精の快感を味わえないけどね、あれっていいものねえ」
 chikaは性転換手術を受けて女性器を造りたいとは思わない。
 乳房を手に入れてからすっかり女の生活になり、男にセックスしてもらうのが楽しくて仕方がない毎日を堪能しているが、ペニスで射精する性感が無くなるなんて考えられない。
 鏡の前に座ってお化粧するのは大好きだ。
 目もとのメイクがばっちり魅惑的に決まり、口唇が鮮やかな赤に仕上がったとき、恍惚となってしまう。
 ミニスカートで太腿を露出した無防備感がたまらないし、ノーブラで自前の乳房が揺れるのを感じると思わず勃起してしまうこともある。
 chikaは、本格的にチカオになったとはいえ、ペニスは必要なのだ。

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「それで、太田さんナンバースリーまで来てるのね」
「そうなんです。来週、太田さんのNo4の予定なんですよ」
「ターさんを勘定に入れると、すでに四人の男を体験したわけね」
「うん」
 嘘だけど、もうそんな事はどうでも良くなっている。もうこうなったら何人でも一緒だ。
「どう?」
「……どう、って……?」
「楽しいでしょ?」
 chikaは顔面がホ火照るのを感じた。
 夕貴ママは、ズバリ言い当てていた。
『楽しい』の他に何の補足説明も不要だ。
「ターさんの紹介してくれる男なら、基本的に紳士だものねえ。社会的地位もあって、お金にも余裕があって、でも、表向きの顔とは裏腹に変態のドスケベ」
 夕貴ママが愉快そうに笑い、chikaも笑ってしまった。
 みんな女装した若い男が大好きな変態スケベおやじなのだ。
 そのスケベの本性を丸出しにしてチカオを愛玩してくれる。
 だからこそ、chikaは楽しくて仕方がない。

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「あのね、結婚したばかりの若奥さんって、いやらしいでしょう?」
「え?」
「ほら、ダンナさんとやりまくってます、チンポをハメてもらうのがうれしくて、一日中、あそこが濡れっぱなし……みたいな雰囲気をぷんぷんさせてる羞ずかしそうな新妻っているじゃない?」
 「…………」
「今のチカオちゃんって、そういう感じなのよ。男にお尻を掘られまくって、楽しくて嬉しくて、っていう雰囲気がぷんぷんなのね。……匂いって言ってもいいんだけど、そういうのを濃厚にまき散らして、すごく色っぽいのよねえ」
「……そうかなあ」
「すっごくいやらしいのよね。そのいやらしさが色っぽさなんだけど」
「…………」
「お下劣にいやらしいわけじゃないのよ。チカオちゃんの性格だと思うけど、さっぱりしてるのにセックス大好きの濃い匂いが漂ってくるのよねえ。変態すけべのおじさんたちには、たまらない魅力だと思うわよ」
 その指摘に、chikaは、なるほど、と思った。
 chikaの日常の頭の中はセックスのことが大部分を占めている。
 男にお尻を掘られまくって、楽しくて嬉しくて……、と夕貴ママに言われて、確かにその通りだ、と納得してしまうのだ。

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 その下り階段は決して急勾配ではないのだが、館岡の腕にしっかりとつかまっていないと前につんのめって転げ落ちそうになる。
 そもそも、踵の高さが10センチを越えるピンヒールをはいて階段を下りるなんて無謀にもほどがある。
 平坦な道を歩くのだって、うっかりすると足首を挫いてしまいそうになるのに……。
 小さな踊り場を経て1階分の階段を下りきると、頑丈そうな鉄製の扉が待ち受けていた。
 金色の文字で『シューシュポス』と書かれた小さなプレートが貼られてある。
 館岡が扉の端にある呼び出しボタンを押す。
 ちょうど覗き窓のような矩形の枠が開き、濃いメイクをした目が館岡を確認して、目の表情が和らいだ。
  ギイィー、と蝶番の軋む音がして、重そうな扉が内側に開いた。
「いらっしゃいませ」 と、ふたりの美女に迎えられる。
 胸のカップなしの赤いビスチェ風の上、赤いレザーの超ミニ、真っ赤の網タイツ、ふたりのおそろいのショッキングセクシーの衣装にchikaはびっくりさせられた。

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 さらに衝撃的なのは、ふたりの股間からペニスがぶら下がっているのがすっかり丸見えなのだ。
 あらわになった胸には量感たっぷりの乳房、艶やかにメイクした顔、鼻があまりに尖角的に形良く整っているのが整形っぽいが。
 ひとりは金髪で、もうひとりは栗色の髪で、どちらも背中までの長さだ。
 そうして、包皮の剥けた亀頭が太腿の間でぶらぶら揺れている。
 目を瞠いて彼女たちの男根を見つめてしまったが、きらきら金髪に染めたほうが、「ようこそ『シューシュポス』へ」 と言ったので、あわてて彼女の下腹部を見つめるのをやめた。
 彼女たちはふたりとも、わざとウルトラミニをはいて垂れるペニスを見せているのだとわかる。
 「コートをお預かりします」
 赤いマニキュアの指の手が差し出され、館岡が背後にまわってチカオのファーコートを脱がせてくれる。
 金髪の彼女はチカオに笑顔を向けている。
 あなたも男なのね、わかってるわよ、 と、その目が語っているように思えた。

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 chikaの今日の出で立ちといえば黒いロングドレスだ。
 ホルターネックで、胸のところで斜め十字に交差して胸元をカバーしている。
 背中も脇腹もすっかり露出した大胆なセクシードレスで、左サイドには深々とスリットが入っている。
  髪はアップにまとめ、アクセサリーといえばダイヤストーンのイヤリングと同じダイヤストーンのブレスだけ、きわめてシンプルなセクシーシックな装いだ。
 その地下の部屋は小ぶりの円形の舞台が中央にあり、舞台を扇形に囲むようにしてボックス席が並んでいた。
  すでに何組もの客が席についている。
 館岡とchikaは、舞台がすぐ前の、特等席ともいうべきボックスに案内された。
 今度は、黒い胸出しビスチェにブラックレザーのミニ、黒網タイツでペニスぶらぶらの美女がやってきて、 「お飲み物はいかがなさいますか?」 と、ハスキーな声で訊いた。
 典型的なニューハーフ声だ。
 館岡は、マール何とかを注文し、チカオが何を望んでいいのかわからなくて困っていると、「このコには何か口あたりのいいカクテルを」と館岡が言ってくれた。
 新しい客たちがつぎつぎと席についてゆく。
 紳士淑女のパーティ……。

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 あまりキョロキョロするのも恥ずかしいので、chikaは目線だけを動かせて周囲をうかがった。
 館岡は「いいところに連れていってやろう」と言っただけで、ここが何の会場なのか、chikaにはさっぱりわからない。
「今日はトランスセクシュアルの日だから」 と館岡に耳元で囁かれ、チカオは「はい」と返事した。
「はい」と言ったものの、要領を得ないというか皆目わからないままだ。
 やがて照明が落とされ、 「何が始まるの?」 と、館岡に訊いてみた。
「見てなさい」
「……」
 舞台にスポットライトが当たり、ふたりの美女が登場した。
 先ほど、入り口でチカオたちを出迎えたふたりだ。
 レザーのミニスカートは脱いでいて、赤いビスチェ風の挑発衣装の裾から伸びたサスペンダーで赤い網ストッキングを吊り、脚には赤いエナメルのピンヒールをはいている。
 さっきはぶらんと垂れていたのに、ふたりの美女のペニスはそそり立ち、赤黒い亀頭はテラテラと光っている。
  妖しくも淫らな雰囲気が立ちこめてchikaは息を呑んだ……。

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 舞台のふたりは、下腹部からそそり立つペニスを誇示している。
 chikaたちの座っているボックス席は舞台のすぐ近くなので、ふたりのペニスの青筋までもが鮮明に見える。
 ふたりとも恥毛はすっかり剃り落としているらしく、股間から屹立する牡根はさながら彫刻のようでもある。
 ……chikaは圧倒されていた。
 セクシーなコスチュームが一因であるのは明白だが、それを差し引いても、舞台のふたりの艶然さは群を抜いていた。
 ニューハーフとしてのクオリティの高さがずば抜けているのだ。
 ふたりとも整形手術を受けているにちがいないが、男好きのする色っぽい顔立ちだ。
 舞台に映えるように濃艶にメイクしているので、ひときわあでやかだ。
 肩のラインはなだらかで優美だし、巨乳といってもいいほどのたっぷりとした乳房は乳首も大きくて、とても男を豊胸したとは思えない。
 ウエストは引き締まり、ヒップはぷりぷりとセクシーにふくらんでいる。
 太腿はむっちりとして足首は細い。
 何よりも驚かされるのは脚の長さだ。
 日本人離れした脚の長さで、ウエストがずいぶん高い位置にある。
 chikaは羨望の眼差しで眺め入ってしまう。
 硬立したペニス棒を持つ麗しき美女たち。
 その性的魅力にあふれた女体と怒立した陽根の取り合わせは両性具有の幻想だった。
 栗色の髪の美女がしゃがみこむ。
 目の前には屹立した肉棒。

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 金髪のほうは腰に手を当てて仁王立ちになっている。
 真っ赤なマニキュアの長い爪の指が力を漲らせているペニスの胴を包み込む。
 ほっそりとした白い指で、どう見ても女の手指だ。
 裏筋がくっきりと浮かび上がった逞しい肉棍に顔をそっと寄せてゆく。
 つけまつげと濃いアイライナーの間からうっとりとした眼差しで見つめ、そして、紅唇を少し開いて舌を伸ばし、雁裏を舐め上げた。
 舞台を凝視していたchikaは、その瞬間、ああんっ! と喘ぎ声を発してしまいそうになった。
 自分が舐めるほうの立場で昂奮してしまったのか、それとも舐められるほうの立場で感じてしまったのか、chikaには判然としない。
 けれども、喘ぎそうになった原因ははっきりとしている。
  それは、これが公開フェラチオだからだ。
 密室で、ふたりだけで楽しむ行為ではない。
 観客たちに見られるのを承知で口淫愛撫を実行する。
 そこには、恥の意識があるはずだ。
 時間をたっぷりとかけたフェラチオが続く。

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 亀頭傘面を舌で舐め啜り、裏筋に舌面を這わせ、陰嚢を吸ってねぶる。
 金髪美女の赤黒い亀頭は唾液に濡れそぼり、そして滲み出したカウパー腺汁も交じっているのか、粘っこいヌラヌラに光りはじめて淫猥この上ない。
 おしゃぶりに熱中しているほうの栗色美女は、空いているほうの手で自分のペニスを浅ましくもしごき上げている。
 ボックス席で神妙に座っているチカオは、膝の上に置いた手の平がじっとりと汗ばんでくるのを感じていた。
 身体が微熱を帯びたように火照り、伸縮性のスキャンティの奥でペニスが膨脹してもがいている。
  こういうドレスを着るときは下着のラインが出ないようにパンティをはかないものらしいが、ペニスを有するチカオには、それは不可能だ。
 だから、陰茎を折り曲げて股間からお尻の谷間に向けて隠すように収納してあった。
 この地下にやってきて、男根をぶらぶらさせているふたりの美女を目にしたときから勃起の兆候はあった。
 そうして、今それは、下着の中で痛いほどに伸張してきているのだ。
  舞台の上では、栗色の髪の美女が仰向けに寝て、その上から金髪の美女が逆向けにおおいかぶさる。
 豊満な乳房のふたりの美女が互いの股間を舐め合う姿勢だが、実際は相互吸茎なのだ。
 円形の舞台がゆっくりと回転しはじめる。
 赤いビスチェ風をまとった細胴、赤い網ストッキングの脚、赤いエナメルのピンヒール。
 目にも鮮やかな扇情的衣装と豊麗な女体、にもかかわらず、玉袋と勃立するペニス棒を持ち、貪るように互いのペニスを舐めしゃぶっている。
 そんな淫らな口戯を客たちはじっくりと鑑賞している。










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