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 館岡に腕枕をしてもらい、彼の腋の下のあたりに鼻面を押しつけ、大きな躰に抱きついて、烈しい情交のあとの心地よい疲労感に包まれて、うとうとしていた。
 館岡の腕は太い。
 もともと骨太で、大柄な骨格に若い頃は逞しい筋肉がついていたのが、中年になって余分な脂肪が付いてきて、恰幅のよい見映えになった、という印象の体だった。
 こうして素肌を密着させていると、館岡は頼れる人物であり、自分が窮境に陥ったときは救ってくれる男で、自分のすべてを捧げるに値する人だ、とはっきりと感じ取れる。
 もちろん、それはヤクザ的な感覚でもあるという事は判っていたが。

 つい今さっき、大量の精液を腸内に、注ぎ込んでもらったばかりで、愛しい極太の肉棒で烈しく抜き挿しされたchikaのアナルは甘美に弛んでいた。

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 アナルに注入された精液が逆流してゆく……。
 肛口から湧き水のように滲み出してきた粘液が、太腿の裏側、ちょうど臀部から脚になるあたりを這うようにゆっくりと滴り落ちている。

 その汁液はシーツを濡らして溜まりをつくり、ひんやりと冷たい。
 chikaは、よくやくふくらんできた乳房を、甘えるように館岡の脇腹に押しつけた。
 男の平らな胸ではできなかったけれど、こうして弾力に富んだ胸のふくらみを押しつけると圧迫されて、へしゃげて変形するのがわかる。
 ああ、こんな柔らかいおっぱいを造ってもらったんだ……、とchikaはうれしくなる。
 乳房を揉んでもらったり、乳首を吸ってもらったりするとき、ストレートに喜悦してしまうけれど、こうやって館岡の躰に抱きついて乳房を押しつけていると、館岡に愛してもらえる身体になった歓びが全身に染み入るようにひろがり、chikaは静かな幸福に包まれてしまうのだった。
「チカオ」
 天井を向いて紫煙をくゆらせていた館岡に名前を呼ばれて、chikaは「はい」と可愛く返事した。
「そろそろ他の男も味わってみるか?」
「え?」
「今までに、チカオは、俺ひとりしか知らないはずだ。そうだな?」
「はい……」

 そんな筈はないと館岡も判っている筈だが、、あるいはchikaの知っている男など、館岡からしtら「男」の内に入らないのかも知れない。

「俺以外の男のチンポは、まだ体験していないわけだ」
 この人は何を言い出すのだろう……?
 ひょっとして、あたしが浮気でもしていると疑っているのだろうか……。

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「チカオ、おまえはまだ蕾だ。蕾が開いて美しい花を咲かせるにはいろいろな肥やしを与えてやる必要がある。わかるな?」
 「はい」と返事するかわりに、chikaは館岡の顔を見上げて、こっくりと頷いた。

 館岡のおかげでエステサロンと美容室に通わせてもらっているし、美容外科では乳房の形成だけでなく、脱毛処置もしてもらっている。
「他の男にも抱いてもらいなさい。それも、肥やしになる」 チカオは耳を疑った。
 この時点で、館岡以外の男とセックスするなんて、とんでもない背信行為だ。
 それに、館岡に抱いてもらうだけで、chikaは十分すぎるほど充足していた。
 それなのに……、どうして館岡はこんなことを言うのだろう……?


 その人の名前は、太田さん、だった。
 もちろん、本名なんかじゃなくて、AさんとかBさんでもいいのだけれど、館岡から、太田さん、と呼ぶように指示されていた。

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 chikaの第一印象は、「うわあ……、かんべんしてよ……」だった。
 「チカオちゃん?」と呼ばれて、つくり笑顔で「はい」と返事したものの、頭の中では拒絶ランプが点滅していた。
 太田さんの容貌は、チビ・ハゲ・デブの三拍子そろっていて、精力的な何とも『濃い』雰囲気を漂わせていた。
 ……たぶん。伸張は165センチぐらい、両方の耳の上のところに白髪の混じった毛が少し残っているだけで、おでこから頭頂部にかけて禿頭がテラテラと光っている。
 体型はといえば、猪首ででっぷりと太り、脚が短い。まるで眉毛の濃いダルマが歩いているようなイメージだ。
 その部屋は、ユカを交えて3Pしたマンションのような一室で、人が住んでいる気配はなくて情事用に使われているらしかった。
 入り口には上がり框がなくて、ハイヒールをはいたままリビングまで行けた。
 館岡はこのような部屋をいくつつも持っているようだ。
「チカオちゃん、ほんとに男?」
 満面に御機嫌な笑みを見せて太田さんが訊く。
 ガウン姿でソファにゆったりと座り、顔面は赤くなり、脂っぽい汗を浮かべている。
 前のローテーブルにはワインの瓶があって、もう、相当にきこしめしているようだ。
「男だなんて信じられないね。かわいいコだ」
 chikaは羞じらってシナをつくる。
 そんな仕草も自然にこなせるようになっていた。

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「ニューハーフ・クラブの若いコを呼んだこともあるが、美人でスタイルもよくて床上手なんだが、しょせん水商売のコだからね、欲得が透けて見えていかん。チカオちゃんのような素人のコは初々しくていいね。さあ、こっちに来なさい」
 この日、chikaはブラウスにツーピースというお嬢さんっぽい出で立ちだった。
 今日にそなえて、館岡が買ってくれたのだ。
 ようやく女らしくこなれてきたハイヒールで、chikaはちょこちょこと太田さんのそばに歩んでいった。
「脱がせてあげよう」
と、太田さんは立ち上がって、chikaの背後にまわり、ジャケットを脱がせてくれる。
 その下はブラウスで、胸のふくらみがくっきりと浮かび上がっている。
 すぐ背中のうしろに来ただけで、むっ、と濃厚な体臭が鼻を衝く。
「うわっ……、苦手なタイプだなあ……」と、chikaは胸の裡でつぶやいた。
 chikaが体を交わせた男はひとりしかいないので、どうしても館岡と比べてしまうのだ。
 館岡は180センチを越える背丈だし、頭髪は黒々として剛毛だし、恰幅はいいけれど肥満ではない。
 男盛りの精を漂わせているけれど、こんな濃い体臭ではない。
「さ、そこに座って」
 促されてソファに座ると、太田さんはchikaのすぐ横に並んで腰かけた。
 もう、膝と膝が触れ合うぐらいに真横に迫ってくる。
 太田さんは、ワインをグラスに注いでくれる。
「ほら、飲みなさい」
「はい。いただきます」

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 chikaは女らしい手つきでグラスを持ち、ひと口、飲んだ。
 ワインの詳しいことは何も知らないchikaでも、それが値の張る高級なものだとわかった。
「チカオちゃんはいくつ?」
「あ……、もうすぐ二十歳になります」
 口から出任せがすらすらと出る。
「そうか、もう二十歳か。しかし、とてもそんな歳には見えないね。幼い顔立ちだからかな」
 太田さんは上機嫌でワインを、ぐびっ、と飲み干した。
 分厚い口唇がヌメヌメと光っている。
 ひげ剃り痕が青々とした顎……、この男に抱かれるなんて嫌だなあ……、と思うが、chikaは笑顔を崩さなかった。
 これも、館岡から与えられた試練なのだから。
「チカオちゃん、きれいな脚しとるのう」
 太田さんの節くれ立った太い指が伸びてきて、chikaの太腿を撫で触る。
 ストッキングの上からとはいえ、chikaはゾクリ、となった。
 嫌悪感……?
 確かに嫌悪感はある。

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 けれども、そうではなくて、この男はあたしに欲情している!
 と、そちら側を、はっきりと感じ取れたからだ。
 甘くて快い満足感と期待感に、ゾクリ、となったのだ。
 その昔は女装するだけで十分に満足できたものだ。
 今日のように愛らしく上品なお嬢さま風に変身しただけで満悦していたはずだ。
 だが、今のchikaは、もうあの頃のchikaではない。
 男とどぶ泥のように性交する悦びを身体で覚えてしまったし、男に揉撫してもらうための大きな乳房まで造っているのだ。
 今日、時間をかけてていねいにお化粧して下着をつけてゆくとき、chikaの気分は異様に昂ぶっていた。
 見ず知らずの男に売られるように抱かれるためにメイクして着飾ってゆくとき、奇妙な心理状態になる。
 気が進まないなあ……、憂鬱だなあ……。
 まず、こんな負の心理状態になる。
 自分で遊びとして男あさりをしているのとは違う。 
 ところが鏡の中に女の貌が整ってゆくと、その人、あたしを気に入ってくれるかしら?
 このルージュの色、似合っているかしら?
 と、紅筆を持つ手が力が入ってくるのだ。
 太田さんの手指は太腿をずっと這い上がってきて、「あ……んうっ……」と、chikaは甘い喘ぎを洩らせてしまう。
 男の太腿にだって性感帯はあるのだ。

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 女らしくぴっちりと閉じ合わせていた内腿は強引にこじ開けられ、太田さんの手のひらはストッキングの端から素肌に移る。
「んうっ……んんっ……」
 裸肌をじかに触られるとなると、またちがう感触になる。
 女なら性器の奥が濡れそぼってくる感じだろうか……、chikaのペニスはスキャンティの中でもがくように勃立してきていた。
「かわいらしくて上品なくせに、パンティストッキングじゃなくてガーター使ってるとはな、チカオちゃん、なかなか粋じゃないか」
 もうすぐ太田さんの手指が股間に到達する。chikaは腰をくねらせた。
 たとえいやらしい手の動きであっても、もうすぐ局部に迫ってくるとなると、もう平常を保ってはいられない。
 スケベなおやじに太腿の奥を撫でまわされたりすると、女ならあそこの奥がぐっしょりと濡れてしまうのだろうか……。
 chikaのペニスは敏感に反応して硬く勃起してしまっていた。

 もう少しでスキャンティの上からペニスをまさぐられるところまで太田さんの指先が迫ってきて、chikaは「あっ! やめてえっ!」と叫びそうになった寸前、不意に太田さんの手指が去っていった。
 ほっ、とひと息つく隙もなく、太田さんはブラウスのボタンを外しはじめる。

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「チカオちゃんの秘密はあとでゆっくりと拝ませてもらうとして、まずはこっちのほうから楽しませてもらおうか」
「ああ……」
 chikaは濃いピンクのルージュを塗った口唇から喘ぎを洩らせた。
 整形乳房を館岡に初めて愛撫してもらうとき、chikaは自らの手で着ているものを脱ぎ、ブラジャーも自分で外して、ふくらませた胸を披露したのだった。
 そのとき、chikaは極度の緊張感に包まれていた。

 羞恥がまずあって、その次に、魅惑的に形成された胸のふくらみを館岡に見てもらう悦びがあった。
 まさに、うれしはずかし、の震えるようなときめきを覚えながら、chikaは造ってもらった乳房を館岡に見てもらったのだ。
 だが、欲望をあらわにした男に脱がされてゆく気分はまたちがう。
 「やめてください」と抵抗したいけれども、抗える立場ではない。
 ブラウスのボタンが外され、ブラジャーのカップを下から上にずらされ、chikaの乳房はすっかり露出してしまう。
 乳房は男の淫欲をそそる肉体パーツだとchikaにはわかっているが、こうして乱暴にせっかちに脱がされてゆくと、やっぱり乳房を造ってよかった、と思うのだ。
「かわいい乳首やなあ」
 と、太田さんは、いきなり揉みしだくのではなくて、女装青年の整形乳房を鑑賞している。

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 chikaは、「うれしはずかし」ではなくて、「はずかし」だけの心地に酔うように身を固くしていた。
「男の乳やのに、悩ましいのう」
 太田さんは、chikaの手首をつかみ、ガウンの前の合わせの奥に導いた。
 彼はパンツをはいていなくて、すでにギンギンに勃起したペニスをそそり立たせていた。
 chikaは太田さんの性器に指を触れ、当然のように握りしめた。

 その肉怒棒は、熱くて硬くて、めまいがしそうになる。
「チカオちゃんのおっぱい眺めてると、わしのムスコ、こないにおっ立ってしまったぞ」
 よだれを垂さんばかりの好色顔が迫ってくる。

 見つめているだけでなく、太田さんはchikaの乳房を手のひらで包みこんだ。
「あっ……、いや……」
 優しく揉み上げてくれて、chikaは「んんっ……んあぁ……」と喘ぎ続け、だんだんと全身の緊張感が解きほぐされてゆくのがわかった。
 手で握りしめた太田さんのペニスは脈打っていて、あたしの乳房を愛撫するだけでこんなに昂奮してくれている、とちょっとうれしくなってしまうのだった。

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「手術でつくった乳とは思えんな、ほんまに柔らこうてええなあ。チカオちゃんは女みたいに色っぽい声で鳴くし、もう、たまらんわ」 と言って、太田さんの顔面が急接近してきた。
 うわっ、キスされる……。
 肩を抱かれて乳房を掴まれているので逃げようがない。
 きっと、すごい口臭がするんだわ……。
 chikaが怖気をふるう間もなく、口唇を奪われた。
 ぬめっ、とした分厚い口唇が押しつけられ、ワインの味がして、chikaの口の中に舌が差し入れられる。
 煙草のヤニ臭さは館岡の比ではない。
 相当なヘビースモーカーだ。
 そしてリステリンの味がしていちおうエチケットは心得ているみたいだが、何ともいえない不快な口臭がchikaの鼻腔を襲ってくる……。

 乳房を揉まれながらディープキスを交じわしている間に、chikaは知らず知らずのうちに太田さんのペニス棒を手指で摺りあげていた。
 好きになれそうもない容姿も、厭な口臭も、chikaの掌の中の太い肉棒の感触の前では大した問題ではなくなっていた。

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 この硬く勃立した責め棒でアナルセックスしてもらうのだ……chikaにとっては、未知の領域に棲む男の2本目のペニス棒……chikaの裡で何かが弾ける……分別とか理性とかいったもろもろがどこかに吹き飛んでゆく……この肉竿をお尻に入れてもらえるのだ……。

 chikaは男どうしの倒錯した媾合の快楽に溺れてゆくのが自分でもはっきりとわかった。
 ひとしきり、舌と舌をねっとりとからみ合わせながら乳房を揉みしだかれて、chikaは身体が熱く火照ってどうにもならなくなっていた。
 太田さんの粘っこいキスから解放されてchikaは大きく息を吸った。
 あのぬめぬめとしたした分厚い口唇が首筋を這いはじめる。
「あぁ……、ああんっ……、あ、あ、あーんっ……」
 chikaはのけぞって切ない喘ぎを洩らせ続けた。
 首筋やうなじをナメクジのように執拗に這いまわった口唇と舌は、次にchikaの乳房を狙ってくる。
 館岡は宝物を愛でるように愛撫してくれるが、この人はまったくちがう……、とchikaは感じていた。
 欲望を剥き出しにして、あたしの肉体を貪ろうとしている……、館岡もあたしの肉体を貪るけれど、もっと情愛がこもっている。
 この人は、あたしの気持ちなどおかまいなしだ……、

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 そう、まるで、この人の性欲を処理するために、あたしがここに来ているみたいだ……。
 乳房の山を舌が這いまわって、とうとう、乳首を吸われた。
「あんっ! んんうっーー」
 chikaは顔面を歪ませ、身をよじって悶えた。
 乳首に性感帯があって、鋭く感応した……?
 ちがう!
 この太田さんという人は、男の身体に豊胸手術で造った乳房に昂奮している……、その証拠に、chikaの握りしめたペニスがいちだんと力を漲らせて脈打っているではないか……。
 どう見ても女の乳首ではないし、女の乳暈ではないが、きれいに形の整った乳房だ。

 そんな男の胸の偽乳房に欲情する男がいて、そんな男の淫欲に応えられる整形乳房を持っているあたし……。
 chikaの全身に電気が走ったような快感が駆け抜けたのは、そういうことなのだ。
 特殊な嗜好を持った男たちの淫欲の対象となる乳房を造った女装娘……。
 いや、乳房だけでなく、髪を伸ばして、ていねいにメイクし、手入れした爪には淡いピンクの上品なマニキュアを塗り、ペディキュアも同色だ。
 chikaは、自分が、太田さんのような性趣味の持ち主に供する改造肉体を有していることに満足し、そうして、ノーマルではない淫楽世界のとば口からその奥の未知の世界をちらりと覗き見たような気がしたのだ……。









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