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 何を今さら江戸川乱歩、、、、ちょっとでも本読みを気取る変態サンなら、乱歩作品の映画化なんてもううんざりって感じでしょ。
 だからこの映画「乱歩地獄」に納められた4本の短編が初めての映画化だと聞いたらちょっと吃驚するんじゃないかしら。
 まあ確かに、冒頭の「火星の運河」(竹内スグル監督)なんて、映画化しようとは考えないでしょうね。
 他の三本だって映画化するには小味だし、、でchikaもこの映画、見たには見たんだけど、レビューなんか書かずに、そのままうっちゃっとこうかって思ってたんだけど、結構この映画、変態者の心には、後からなんだかじわっと来る部分があるんですよね。

 「乱歩地獄」は短篇オムニバス形式で、四人の監督が原作をそれぞれの解釈で映像化してるんだけど、4本共に浅野忠信がメインで出てて、彼の鬱陶しい長髪がいつも見られるって寸法(笑)。
 実相寺昭雄監督がメガホンをとった「鏡地獄」では、なんとこの浅野忠信君が長髪の明智小五郎!!で登場します。
 「似合わねぇ」の極地なんだけど、明智小五郎・小林少年・鏡職人(成宮)の男同士のエロチックな視線の絡み合いがピリピリと交錯するに至って、浅野小五郎もいいかなぁって感じになってきます。
 浅野君ってゲイムービーの主人公そのものより、仄かに同性愛を感じさせるような演出にぴったりの人なんですよね。
 でも「鏡地獄」の場合、メインは浅野君より、鏡職人を演じる成宮寛貴君で、彼が義理の姉である梓(小川はるみ)の口に自分の指をつっこんで吸わせたり、蝋燭たらたら和風ボンデージしちゃう姿が意外に似合うのには吃驚。
 この短編のメインテーマはナルシス。女達は成宮寛貴君の美貌の虜になって、彼が仕掛ける「影取りの鏡」に次々と殺されていくんだけれど、途中、男である筈の小林少年も鏡にやられそうになる描写が秀逸。
 一説によると、明智夫人の文代が入院したのは、明智と小林の仲のためだというくらいだから、小林君って完全な「少年愛人」だったのかも。

 三本目の短編は『芋虫』。
 これが未だに映画化されていなかったとゆーのはちょっと不思議。「芋虫」って撮るのは簡単だけど完全にピンク映画かホラーになってしまうからなのかしら?テーマは完全なボンデージSMだし。
 廃墟のような屋敷の部屋で、両手両足を戦争で失い胴体だけになった須永中尉(大森南朋)とその妻・時子(岡元夕紀子)が、世間から隔絶された状態で暮らしている。
 視覚と皮膚感覚しか機能していない“芋虫”状態の夫を、献身的に世話する時子だけれど一方で彼への残虐な欲望を抑え切れず、日々、異常な性交に溺れて、、、。
 って感じの映画なんだけど、時子に感情移入するより、須永に自己投影する方が愉悦感を味わえるかも知れない短編に仕上がってます。(M男へお勧め、S女には少し物足りない)最後に、夫と自分も同じ姿になると決心する時子が愛おしい映画です。

 最後の短編『蟲』は、浅野君の魅力が一番良く出てる作品なんだけど、こっちはフェチブログの蝦頭で取り上げるよりは、純粋に映画レビューで紹介した方がよさそう。
 まあ浅野君演じる厭人病者の柾木愛造が、女優の木下芙蓉(緒川たまき)への思いを遂げるために彼女を殺害してその死体と暮らす内に、彼女の腐乱した下腹部に頭をつっこんでまどろんでいるシーンなんかは、ちょっとピンと来るものがありましたが、、。

 この映画、江戸川乱歩の作品を扱っていながら、その猟奇ぶりが、現代の世相と完全調和している所が、後を引くんでしょうね。