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 蜈蚣Melibeの「バージェスの乙女たち・ディノミスクスの章」を読む。「仮面のナターシャ」という短編で戸惑ってしまった。chikaの書いた中編エロ小説「男女獣・緒羅竜児の冒険」にも、中身が人肉なボンデージ人形が登場するからだ。
 もっともchikaの場合の「人肉」は、東南アジアに麻薬を買い付けに来たマッチョな拳法の達人がセラミック製の女性型ボンデージドールに閉じこめられるという設定で、蜈蚣Melibeのものとは性別からして違うのだけど、ショックはショックだった。基本的に性差の違いはあれど、登場人物達の人形化される意図が「屈辱」にあって、その「屈辱」じたいが エロに直結してるからだ。

 「仮面のナターシャ」のダイジェスト。
ハーレムの中において一番の美貌を持つナターシャはスルタンの寵愛を一身に受けているのだが浮かない表情を見せる。ナターシャの友人でありハーレムの一員である野心家のアヤメはその理由を聞き出す。ナターシャは国元に将来を誓い合った恋人がいて、やがてその彼が自分を連れ出してくれる筈なのだが、、という。
 そんな夢物語が実際に起こり得る筈がないと心ひそかにナターシャを笑うアヤメだったが、、それは現実のものとなった。しかしハーレムから逃げ出した二人は、アヤメの密告によって再びとらわれそうになり心中をはかった。
 しかし二人は死にきれず、ナターシャが目覚めた時、彼女は四肢を切断された上、金属製のボンテージドールに肉詰めにされる羽目に。
 ナターシャは顔の皮膚をはぎ取られ、代わりフルフェイスの鉄面を装着されるのだが、その口は差し込まれた男の男根が大きくなって上唇に仕込まれているボタンに触れると、上唇から刃が落ちてきて男根をギロチンにかける仕組みを持っていた。
 つまりナターシャは宦官を造るための「生きた去勢機」に肉体改造されてしまったというわけだ。
 ・・・まあchikaの「男女獣・緒羅竜児の冒険」との接点はここだけなんだけれど、空想上の性的冒険は「オラ竜」も、バージェスもそれぞれが違うバリエーションでどんどん広がって行きく。「オラ竜」の続きは、SMfで読んで頂くとして、「仮面のナターシャ」のほうも凄いことになっている。
 ナターシャの脱走を密告したアヤメは、その一年半後、自分の体をナターシャそっくりに整形し、スキンヘッドした頭にナターシャの髪で作った鬘、抜歯した歯茎にナターシャの歯で作った入れ歯、ナターシャの顔の皮膚で作った仮面をつけて"ナターシャ"として、スルタンの寵愛を勝ち取る。
 他人の肉体の一部(しかも一度死んだモノ)を移植して、成りすますという倒錯も呪術的なエロを感じさせるが、、このあたりのアヤメの心理描写がクールで淡々としているのも面白い。
 それと人面マスクの装着具合を「図解」してあるのが羨ましかった。chikaの小説にも人面マスクの装着シーンの描写が結構出てくるんですが、文章で書く場合「説明」と「萌え」のバランスが結構難しくて、。、

 でもこの手の小説を書いたり漫画を読んだりしていつも思うのは「肉体と精神の分離・乖離」という感覚ですね。宗教的視点抜きに「肉体と精神は別物」という感覚が、こういった性的ファンタジーの基盤になっているのだと思うんですね。
 そして現代は圧倒的に肉体より精神が優位にある。性的犯罪って一見、身体が先行してるように見えるけれど、実際は「肉体と精神が分離・乖離し、さらに精神が優位になってしまった」状況が生み出しているものだと思う。
「18歳少女に首輪、監禁104日…24歳男」だって、よーするに基板はそこにあってチップ部分がメルトダウンしてるってか、、そーゆーことなんじゃないかと。