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 「ニューハーフビデオでさ、女の子と絡まされるのがあるじゃない。あれって嫌じゃない?あたしならそんなのには頼まれたって出ない。」ねえそうでしょ?って感じで意見を求められるんだけど、chikaは相手次第でどちらもOKだから生返事で答えておくコトにしてる。

 その子は、純粋に女の子になりたくてニューハーフになった人だから、純女さんと絡むなんて「レズなんて変態よ」みたいな感覚なんだろう。
 chikaがこの手の話に深入りしないのは、同じクラブに所属してる仲間でも、お互いがたまにしか顔を合わさない仕組みになっていて、変にオープンに喋っちゃうと後々気まずくなることが多いから。
 クラブのコトはあまり詳しく書けないんだけれど、スタッフも全員ニューハーフってわけじゃなくて純女さんもいれば職業が「人妻」だっていうヒトもいる。でも「おなべ」ちゃんはいないんだよね。

 上の方は「これからの時代FTMも取りそろえんとな」などと人権団体や性解放運動に携わっているヒトが聞いたら卒倒するようなことを宣っている。(まあ今の時代、性的マイノリティが、ある程度自分をオープンにして生きて行くにはどちらかというと風俗や水商売・芸能にその身を置く必要があると思うから、こういう人達も必要と言えば必要なんだけど)

 そんなこんなでその子と話した後、chikaは石田衣良の「少年計数機」を自然と思い出してた。「少年計数機」の中に【妖精の庭】という短編があって、それには男に性転換したショーという女性が登場して、彼女(彼)の男気が実に可愛らしく活写されているの。
 ショーは、女の子の部屋の映像をネットに流している組織のモデルスカウトなんかをしてるワケ。でFTMのショーとしてはナンバー1のアスミに惚れてるわけね。
 そのアスミがストーカーに付け狙われ、ショーが一対一の対決を余儀なくされて、、って話なんだけど、石田衣良はああ見えても「人情話」書くのがすごっく上手いからchikaはショーの健気なさに思わずグッスン。

 蝦頭をご覧の皆さんならFTMの意味は充分ご理解願えると思うんだけど、公式には(遺伝子的には女性、精神的には男性の性同一性障害者)みたいな定義付けがなされています。 冒頭の同僚の「レズみたいで変態」って言葉なんだけど、性同一性障害者の恋愛は同性愛とはちがうんですよね。同性愛というのは、自分の性別には違和感がなくって、恋愛の対象が同性に向くことだし。
 すなわち、同性愛ってのは恋愛の対象となる性別の問題なわけで、それに対し性同一性障害は、自分は身体はどちらの性別に属しているかをわかっているのに、心ではその性別であることに不快感や嫌悪感を抱いてるっていう自己認識の問題になるわけよね。
 つまり、同性愛と性同一性障害とでは次元の違う問題だから、同僚みたいな発想がでてくるわけね。
 時々、Transsexual(TS)Transgender(TG)Transvestite(TV)みたいな分類や、Gender Identity Disorder (GID)といった概念そのものが、うざったくてしょうがない時があって「理屈なんていいから、人に迷惑かけないんなら好きにいきりゃいいんじゃん」って感じなんだけど、マイナーなセクシャリティって、やっぱりこうやって生き方そのものを分類したり理解して行かなければ「自分」も「社会」も見えてこないのかなとも思ったりする。

 例えばニューハーフって外見上の「女らしさ」を身に纏う事によって性転換するわけでしょ。ジェンダーフリーの感覚で言えば、まずは「らしさ」を解体しないと次のステージに上がれないわけだから「らしさ」を身に纏うのは後退のように思えるわけ。
 かと思えば一時流行ったビジュアルバンド系の男の子達って、別に「女の子」になりたくて化粧をするわけじゃないし、そんな彼らがある程度の市民権を得るという事は、「男・女らしさ」を無意識に解体してるって事になるわけだし、、。
 やっぱりそんなこんなを個人個人が考えたり悩んだりする事が大きく膨らんでムーブメントになった時に、人権を確立していく事が可能なんだろうと思う。
 あるいはそれが叶わなくても「男に成りたがる女や、女になりたい男は社会から抹殺しろ」みたいな反動的な動きの台頭への歯止めにはなっているんじゃないかとも思うのね。

 所で最近、chikaの本家サイトのSMfで「アジアンドラッグのナベシャツ」さんにリンクを張らして頂きました。 アジアンドラッグさんのBlogで[性別に違和感を感じるキミへ]プロジェクトがスタートしたようです。とても興味深い取り組みだと思います。このエントリー、厳密に言うと、その趣旨からは少しズレるかも知れないのですが、賛同の意味でトラバを打っときます。
追記
img20050312.bmp 第77回アカデミー賞の主要4部門に輝いた「ミリオンダラー・ベイビー」のヒラリー・スワンクは1999年度にも「ボーイズ・ドント・クライ」アカデミー賞最優秀主演女優賞をとってます。
 「ボーイズ・ドント・クライ」は実話を元にした、もろFTMを扱った映画で、ヒラリーは性同一性障害のブランドンを熱演していますが、この映画相当にきついです。
 ハリウッド映画はシリアスなテーマを描いたものでも靴底を舐めるような作品は作らない感じがしますが、この映画はブランドンの嘘つきな性格だとかも描くし、「なりたかった男」そのものに「女」としてレイプされるバッドエンドまでとことん描いて行きます。
 あれから6年、、FTMを取り巻く環境は変わって来たでしょうか。