05534b0e.jpg
 韓国女優イ・ウンジュさんの自殺報について思いを巡らせている内に、ふと一部のネットで使われている「ファビョン」という単語を思い出した。
 「ファビョン」とは「火病」のハングル読み。 「火病」の正式名称は「鬱火病」だそうだ。
 「鬱火病」は韓国・朝鮮人にだけ現れる特異な現象の精神疾患とされており文化欠陥症候群とも言われるらしい。 怒りを抑えすぎて起こる強いストレス性の精神疾患でありストレスを適切に解消できず、我慢することで胸が重苦しくなる症状を指すという。
 もちろんイ・ウンジュさんの自殺とこの「ファビョン」を関連づけて考えている訳ではない。単純に彼女が出演していた「ブラザー・フッド」が強い兄弟愛や家族愛を描きながら、映画としての泣かせ所が「恨(持って行き所のない怒りや悲しみ)」にあるという、いかにも韓国映画らしいものであったので、ついつい文化欠陥症候群という言葉に連想を抱いただけの話だ。

 ただイ・ウンジュさんが同性愛や裸を見せる役柄に強い抵抗感があった事は確からしく、どうもchikaにはそれが韓国国内での濃厚な家族愛やそれに裏打ちされたモラル・倫理感上で展開された葛藤であるように思えるのである。
 日本でこういった自殺が起こるのかというと、かなり時代を遡ったとしても「それは演技上のこと」という割り切りをする女優さんが多くて、イ・ウンジュさんのような煮詰まった反応は出てこないような気がするのだけれど、、。

 そんなことに思いを巡らせていると、今度は韓国初の「トランスジェンダーグループ」が今月誕生したとのニュースを発見。
「レディー」は、男性から女性に性転換したメンバー、シンエ(29)、サハラ(25)、ビヌ(22)の3人からなるグループだそうだ。
 グループのリーダーのシンエは「自分自身に正直になりたかった」と「トランスジェンダーグループ」としてのデビューの動機を語っている。シンエは性転換前からCM出演など活発に芸能生活を送っていたらしいんだけど最近カミングアウトをしたそうな。
(えーっ、あんた実はオトコだったの!!ってノリなのかしらん。ありえねー。ふつー判るよ、そんなもん。) db60c3d1.jpg

 サハラは2003年・タイで開かれたトランスジェンダーコンテスト「ミスティファニー」大会で4位に入賞するほど、の美貌の持ち主。一番年下のビヌはテコンドーを楽しむなど活発な性格だったが、自分の性アイデンティティーに混乱を覚えていた最中にメンバーの2人に会い、果敢にカミングアウトしたのだそうだ。
 まあプロダクションが噛んだ企画ユニットだから「カミングアウト」したっていう辺りのニュアンスは微妙なんだろうけどね。
 韓国のミュージック界ではソロでハリスという有名なトランスジェンダーの存在があげられるけれど、彼女の男から女への「なりゆき」はそれなりに苛烈なものがあったみたい。
 ここまで読んで下さった方はお気づきだと思うんだけど、chikaが試みたいのは、国・文化の違いによって性倒錯や性の問題がどう違っていくのかの考察なんですよね。
 とりわけ韓国と日本の差っていうのは、両国が民族・人種的に近似値なんだから凄く面白いと思うわけ。
 chikaの映画レビューでは何度か書いているんだけれど、エンターテインメントの分野では既に日本映画は韓国映画に追い抜かれつつあるようなきがするのね、、、でも小洒落たというか少し前衛を気取った恋愛映画や私小説じみた映画についてはまだ日本映画の方に一日の長があるような気がしてるわけ。
 アクション映画やミステリー映画なんかは、ハリウッド流の娯楽を解析して自国の文化風土に合体させる事は出来ても、恋愛はやはりその国特有の道徳観や家族に対する概念などが色濃く反映せざるを得ないから、韓国の場合はストレート剛速球の映画は撮れても、ちょっと斜めからの視点が入った映画は難しいのだと思う。
 (もっとも日本の冬ソナブームなどは、自分たちの手もとにはない「ストレート」を求めた結果発生したのだから皮肉と言えば皮肉だけど)
 性倒錯については歌舞伎の女形に該当する存在が韓国にはあるだろうか?とか稚児や若衆など、半ば男色と女色が渾然としてあってそれが特に道徳的に非難されなかった時期があったのだろうかとか?そう言ったことも考えてみたら面白いのじゃないかと思った。
 TVなどのマスメディアに多く露出して認知度が高いトランスジェンダーぽい人って、美輪明宏・ピーター・カルーセル麻紀(この人はマジ)でしょ。それに昼間から「ミスタービジョアル系」なんかがあったりして、社会への食い込み方が違うのかなぁ。
 タイのレディボーイさんたちみたいな位置づけともちょっと違うしね。こうして見るとつくづく不思議なバランス感覚を持った国なんだよね。日本って。


よしおかさんへ

08688285.jpg
 韓国は儒教思想が深く根付いているから性的な文化シーンではかなり保守的な考えの人が多いのだろうという思いこみがあったのですが、どうもそうでもないみたいですね。
 映画『ドント・テル・パパ』なんかはテレビCMで「太くて硬いのが好き」というキャッチを長そうとして物議を醸し出したり、その試写会では「セックスコメディー」という映画コンセプトに合わせてコンドーム1万個を観客に配ったのだとか。
 イム・ホさん(左写真の真ん中のヒト)に至っては、この映画に登場する性転換手術を受けたオカマショーのリーダーで歌手のボリス役を演じるために頭から足のつま先まで、すべての毛を剃り落として体当たりの過激演技をこなしたそうです。
 価値観が変わっていくスピードは「国の勢い」に関係があるのかも知れませんね。