f3be3cc0.jpg
 「僕はあなたを生きている」とそのストーカーは少女に言った。愛する人の身体を、人生を奪うこと、それが究極の愛のカタチ…その妄執はやがて男の身体にさえ影響を及ぼし始め、男はついに少女そのものに転生を果たしてしまう。

 とまぁいかにも蝦頭好みの『PERFECT BLUE 夢なら醒めて…』なんだけれど、映画自体はサイコ・ミステリーというより形の変わったラブロマンス映画と言った方が良いのかも知れない。
 シャワーを浴びるストーカー男のカラダから沢山の体毛が排水溝に流れて行く描写があったり、勤め先のコンビニの店長に「君、もち肌だな、女の子みたいだよ。女性ホルモンが多すぎるんじゃないの」とからかわれる場面があったりで、男から女への変身で映画の濃度を高めようという仕掛けがあるにはあるのだけれど、変身にはそれ程拘っているようではないみたい。
 十歳程度の女の子(主人公・愛)に一人の少年(後のストーカー)が一目惚れして、それ以降ずーっと「彼女の人生を生きることが僕の彼女への愛なんだ。」なんて思いこめるものだろうか?という所でまず脚本が躓いているみたい。

 そういう「倒錯」に、リアリティを持たせる為には、二人の年齢に後二・三年欲しい所だし、少なくとももう少し二人に接触の場面をあげないとそれは成立しないと思うんだけどなぁ。
 それぐらい押さえてくれれば「惚れた女の子にそっくりに変身」はできなくても、性転換手術をして「良く似た女の子」になっちゃう青年はアリだと思うんだけど、、、。

 ストーカーの名前は俊彦、演じるのは「殺し屋1」でイチ役を演じた大森南朋。ちなみに俊彦は「僕はストーカーなんかじゃない」と言い切ります。実際、愛のことなら何でも知っている彼は、アイドルの卵である愛をつけ回しているのではなくて「君を生きているから総てが判るんだ」というレクター博士みたいな人で、厳密な意味ではストーカー行為を働いているわけではないのですね。
 でも、その「考えそのもの」がストーカーだっちゅーの、、えーその辺りを、深く描き込まなかったので、この映画は怖くなかったのですね。愛を演じるのは前田綾花、、chika、この子の事はまったく知りません。今後も知らないでしょう。chikaの中では用済みです。

 おっとこのまま行くと映画レビューみたいになってしまうので話を元に戻しますが「好きな人になってしまいたい。」というパッションは何処から生まれ、何処に行くのかってことですね。
 普通は「好きな人と一緒になりたい。」という形に物事は進行するのですが「一緒に」が抜けてしまうところが「倒錯」なんですよね。
 でもこの気持ち、chikaには判ります。変態だから?そっかなー、貴方には判りませんか?
 むしろ順番としては逆なんじゃないかと思うんです。人間には「好きな人と精神的にも肉体的にも同一化したい」という原始的な欲求衝動があるのだけれど、実際にはそれが不可能だから「恋愛・セックス」という社会的な営みにそれを転位せざを得なかったのではないかと、そんな気がするわけです。

 オルガスムスに達すると、愛する人と一体化したような気持ちと同時に絶対的な孤立感を味わいませんか?だから「好きな人になってしまいたい」というパッションは、その表出が人によって違ったりするけれど誰しもが持っているものではないかと思えるわけです。(例えば誰でも恋に落ちる前段階で「あの人の事をもっと知りたい」とか自然に思うでしょう?)

 たまたま偶然に、昔知ってた子が出てるAVを見る機会があって、彼女がビデオの中で「○○ちゃんの夢はなに?」っていうインタビューに「綺麗になることかな」って答えてるのが凄く印象的でした。
「えー?今でも随分綺麗じゃない。」「まだまだですぅせっかくこういうニューハーフになったんだから、もっと綺麗にならなくっちゃぁ。」って。
 彼女って外人モデルみたいな顔立ちじゃないんだけど、十分「綺麗で高級な女の子」に自分を改造しきってて、これ以上やるとマイケル君にリーチぽいんですよね。知ってた頃の彼女ってホルモンの効果が良い具合に出てて、熟し切ってない「女の子」って感じだったんだけど、このAVじやまるで羽化したみたいに熟々、、でもその気持ち凄くわかる。 だってそれって自分の中にあるファムファタールを生きるって事なんだから。

 映画『PERFECT BLUE 夢なら醒めて…』じゃ、愛になってしまった俊彦は、愛と間違えられて刺し殺されるんだけど、ある意味、自分の生を全うしたんじゃないのかと思いますね、、。
追記
2aa52d96.jpg
 公式サイトでは、愛の顔から大森南朋の顔へとビニョーンとモーフィングするカットを見ることが出来ます。それとかシャワーシーンを下から見上げたカットは男の背中に微妙に胸が盛り上がっているようなのがあって、シリコンブラでも付けてるのかとか色々考えてしまいます。
 でもこの映画のマーティロ・マヌキアンのイメージ画は文句なく素敵ですね。全然、映画とマッチングしてないけど、、、。