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 アイビィやマーキスのラバービデオを見ていると、時々泣きたくなる程、切ない思いに駆られる時がある。勿論、これらのビデオに物語性などあるわけもないから、その感情は純粋に視覚刺激から喚起されるものだ。
 例えば目と口元しか空いていないビチビチのラバーマスクから覗く、生身の人間の器官の動き。白目と黒目から成り立つ濡れた眼球に震える睫。マスクの皮膚に対する圧着力の為に普通よりも充血して晴れ上がった唇の戦慄き。マスクの側頭部にうっすらと浮き上がる押しつぶされた耳蓋の形。丸坊主の頭の形をそのまま人工的なヘルメットに形成しなおしたかのようなラバーマスクの頭部。
 その着用によって、人間の「外見の日常」から遙か遠くへ離れていく筈なのに、もっとも人間の生々しさを抽出する力を併せ持つラバー。それを身に纏った人間になぜこれほど強く惹かれるのか、、。
 モデル達のラバーで被われた艶やかな頭部をねっとりと舌で舐め続けていたい。(叔父さん達相手の時はあくまでサービス。相方はラバーにまったく興味がないし、、寂しい) 性的興奮器官となったラバーマスク同志で頬ずりをし、鼻を嘗め回し、筋肉の堅さを感じながら舌を絡ませるディープキスとゴムくさい唾液の交換が出来たら、、。chikaは永遠のゴム人間に変身してしまうだろう。

 ラバーには肉体的な官能以外にコンタクトする「着ることの楽しみ」がある。高級日本着物の布地の美しさを思い浮かべて欲しい。その美しさは「見て楽しむ」ものであり、どんな美女であっても生身の人間が身に纏うようなレベルのものではない。そして戦国武将の鎧の美学。それでも人はその美を身に纏う。これは一種の倒錯である。
 chikaの好きなもの。ラバーで被われたくるぶし。内部の爪の形が浮き上がったラバーグローブ。関節に浮き上がる数筋のラバーによる皺。ラバー着衣は彫刻と生身の中間地点に人を運ぶ。


PS 今日ご紹介するのは、福居ショウジン監督の映画「RUBBER'S LOVER」のスチールを担当されたカメラマンさんのサイトです。chika的にはこの映画、難解でよく判らなかったので自分の映画レビューのコーナーにさえ取り上げなかったのですが、、。よく考えたら日本映画界でしかも「ラバー」一本の作品があるなんて一種の奇跡ですよね。